書評「てっぺん 我が妻・田部井淳子の生き方」勇気が貰える一冊

てっぺん

病気になっても、病人にはなりたくない

これは2016年10月に亡くなった登山家、田部井淳子さんの言葉です。

とあるインタビューでこう語っていたのですが

 

 

とてもこの言葉は心に響きました。

がん性腹膜炎と診断され、余命三ヶ月だと申告されたのにも関わらず田部井さんは非常に前向きで

「山は清涼剤であり、静養剤であり、生きるためのエネルギー源山に行くと元気になる」

と語り、最後まで登山を楽しんでおりました。

登山というと登らない方は

「登山=疲れる」

と思われる傾向にあるようですが、ただ疲れるだけではないんです。

山に登れば確かに疲れはするのですが、翌日は筋肉痛は残っていても全身にエネルギーがみなぎっているものなのです。

そして今こそ元気ではありますがこのインタビューと、今回紹介する本を読んで

私も病気になっても病人にならず、いつまでも登山を続けたいと改めて思いました。

筆者について

田部井淳子さんは多数の本も出しておりますが、この本の作者は田部井淳子さんではなくその旦那さんの

「田部井政伸氏」です。

旦那さんの方はあまり知らなかったのですが、旦那様も登山家で

グランド・ジョラス北壁、マッターホルン北壁、ヨーロッパ三大北壁のうちの二つの北壁を1シーズンで登り切るなど、国内外にて多くの登山実績を残している淳子さんに負けず劣らずの凄い方のようです。

田部井淳子さんについて

日本の登山家。女性として世界で初めて世界最高峰エベレストおよび七大陸最高峰への登頂に成功したことで知られる。

:wikiより

本書の内容

田部井さんたちの出逢い、これまで登った山でのこと、淳子さんの闘病のことなどが綴られております。

淳子さんが亡くなった後に綴られたものですが暗さや重さはなく、読後感は非常に爽やか。

なぜなら全編、非常に前向きな内容だったからです。

この本のテーマも冒頭でお伝えした

「病気になっても病人にはならない」

というポジテイブなものであるように感じられました。

筆者の政伸氏もいくつもの病気や怪我を経験しております。

まず、高校生の時に痛くて歩けないほどの結核を患います。

そして結核から骨盤カリエスという病気も発症してしまいます。

当時では骨盤カリエスにかかると寝たきりになる程重い病だったようです。

しかしそれでもめげずに体調のいい時をみはからって山に登り続け、高校を卒業する頃には病気を克服したのです。

また、ヨーロッパ三大北壁のうちの二つを極めた際に、両足の指を凍傷で失ってしまいます。

両足の指を失ってしまえば、ふんばりが全く効かなくなってしまいます。

さすがにはじめは山を諦めかけた筆者ですが、それでも

「足の指を失ってもその状況に応じた登山はできなくはない」

とリハビリを繰り返し、再び山に向かうようになるのです。

淳子さんもそうですが、夫の政伸氏もまた、病気になってもめげずに前向きなのです。

また、山は楽しいもの。

楽しむことを最優先にしなさい、というメッセージも伝わってきました。

本文中にこのような文章があります。

「山に麓から自分の足で登ることは大切なことだけど、無理だと思ったり面倒だと思ったりしたらケーブルカーやロープウエイなどの便利な交通機関に頼って

上の方まで行って、まず自分が山のなか、自然の中にいることを楽しんだ方が断然いい。

それによって山や自然のすばらしさがわかったら『次はどこに行こうか』と楽しい気分になるから。」

:本文中より引用

この文章にはハッとさせられました。

私は

登山に来たんだからケーブルカーとかロープウエイなんて邪道!自分の足で登るのが正義!

 

と、思っていたのですが目が覚める思いでした。

そうなんですよね。

登山とは辛く、厳しいものでもありますが楽しいものでもあるのです。

一つの登り方に固執してその楽しさを犠牲にしてしまうのはもったいないことなのです。

この本を読んで自分の考えも改めさせられました。

まとめ

この本を闘病中の人が読めばきっと勇気が湧いてくるはずです。

本を読めば病気が治るわけではありません。

しかし、病気になってもこんなに楽しむことも出来るんだと勇気が出て前向きな気持ちにもなれるのではないでしょうか。

健康体の方も、いつか病気や怪我をした時もめげずに山に登ろう。

病気や怪我をしても山は登れるんだ、と勇気づけられるはずです。

 

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みくぞう

山の魅力にとりつかれたソロハイカー。 山には主にトレーニングで登っています。 最近はトレランがメインになりつつありますが、ハイキングもあいかわらず好きです。 気づけば山や温泉のことばかり考えているようになったので、細かく役立つ情報を発信していきます。

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