ロングトレイルという言葉を聞いたことがありますか?
ロングトレイルとは読んで字のごとく、長大な「歩く旅」を楽しむ為に整備された未舗装の道となります。
登山との違いは必ずしも「登頂」することにこだわらないこと。
どうやら「ピークハント」という概念は日本特有の考えらしく、海外の多くの国では(一部の登山家はのぞき)ピークハントにこだわらないハイキング、トレッキングがメインのようです。
そしてロングトレイルは登頂にこだわらない、雄大な旅。
時には何泊も山や自然の中に寝泊まりし進んでいきます。
目次
ロングトレイルの魅力
車やバス、電車での移動がメインでももちろん旅です。
ですが自分の足で歩けば、電車や車では通ることのできない山や川、森といった自然の中にも行くことができます。
そんな自然の中を長時間歩き、これまで歩いてきた稜線を振り返ったり、今日歩いた山々を見上げたりするとなんともいえない充実感や達成感が味わえるものです。
そもそも旅とは日常から離れ、非日常を観たり、探検したり、非日常の中に身を置き療養する行為です。
これらの要素を全て高いレベルで備えているロングトレイルこそ究極の旅だと私は思っております。
山の魅力を味わえるロングトレイルのコース
ここからは私が実際に踏破したコースを含め、山の魅力が凝縮された関東のロングトレイル縦走路を紹介したいと思います。
雲取山 奥多摩駅〜石尾根〜三峯神社〜三峰口駅
東京、埼玉、山梨の県境に位置する日本百名山「雲取山」
雲取山の山頂まで至るコースはたくさん存在しますが、一番人気なのは鴨沢ルートのピストンだと思われます。
しかし今回紹介するのは奥多摩駅からスタートして石尾根の縦走路を進み雲取山へ至り、そこから三峰コースで三峯神社へ、さらにそこから表参道コースで下山し、三峰口駅までという奥多摩から秩父まで横断する総移動距離40キロ以上の長大コースです。
このコースの良いところはコースの8割ほどがトレイルだということです。
奥多摩駅から石尾根の縦走路までは比較的すぐに登山道に入ることができ、そこから表参道コースの下山口まではほぼトレイルです。
まさに「ロングトレイル」が楽しめるコースだといえましょう。
しかもただ、長いだけでなく変化にとんでいる点も良いところです。
石尾根は展望の良いところが多く、各ピークの手前にはこのような巻道がついております。
お伝えしたようにロングトレイルはピークハントにこだわらない登山スタイル(移動スタイル)なのでロングトレイルを体感するにはぴったり。
ピークを巻けばあまりアップダウンがなく、フラットな山歩きを楽しめます。
更に雲取山を過ぎ、三峰コースに入ると山深い奥秩父のそれに一変し、石尾根とは違った景色と雰囲気を楽しめます。
ただ、三峰コースは石尾根とは違い、巻道は少なくアップダウンが多いのが特徴です。
そして三峰コースの終点が三峰神社。
パワースポットとしても有名な神社で、境内に漂う神聖な気と雰囲気に圧倒されるでしょう。
更に余力があれば三峯神社表参道コース(または裏参道コースでも下山できます)で下山してみましょう。
今はあまり人があるかないコースではありますが、中腹には立派な滝が観れます。
このコースは長大ではありますがとてもよく整備されており、標識も多いので道迷いのリスクも少ないのも魅力です。
私は日帰りで行けましたが、一泊二日で行くのが普通です。
雲取山荘や避難小屋に宿泊して踏破するのをお勧めします。
詳しいコースは私のYAMAPの活動日記を参照ください。
奥秩父主脈縦走路
雲取山、甲武信ヶ岳、北奥千丈岳、金峰山、瑞牆山などの名峰を踏破するダイナミックな縦走路です。
奥多摩から瑞牆山まで続くその縦走路の総距離は70キロを超え、4泊から5泊をかけて踏破するのが一般的です。
山小屋は豊富にあるので、補給はしやすいですがとにかく長く、アップダウンも激しく、2000m超えの稜線をずっと歩くことになるので天候や服装にも気をつける必要があります。
また、何日も荷物を背負って歩くだけの体力ももちろん、必要となります。
簡単には踏破できないロングトレイルではありますが、だからこそ踏破できた時の感動や達成感もひとしおなのではないでしょうか。
何より名だたる名峰のピークをいくつも踏めて、晴れた時はこれぞ「山!」とも言える圧倒的な景色を見ることができるのできっと心に残る山旅になるはずです。
ただし、工程がとにかく長いのでファストパッキングスタイルで行くのも方法の一つです。
ファストパッキングとは?
「バックパッキング」(テント泊縦走)という言葉から来ていて、軽量化された縦走用の荷物を詰めたバックパックを背負って時にはランを交えながら軽快に進む登山スタイルです。
ファストパッキングで行けば奥秩父主脈縦走路でも一泊二日で行くこともできるようです。
こちらの記事が参考になります。
ただし、ファストパッキングは登山経験者、上級者向けの登山スタイルです。
何を引いて、何を軽量化させるべきかの知識、そして何よりも通常の登山以上の体力が必要です。
初心者の方は安易に手を出すべきではありません。
笹尾根縦走
笹尾根(ささおね)は、多摩川水系の秋川(南秋川)と、相模川水系の鶴川の間に連なる尾根の名称である。多摩川水系と相模川水系の分水嶺で、標高1000m前後の山々が続く。東京都と山梨県の境界となっており、広義には東京都と神奈川県の境界となる区間を含む。(wikiより引用)
狭義では槇寄山から浅間峠までですがここではロングトレイルなので、三頭山から高尾山までを示します。
総移動距離は40キロほどとなり、素晴らしいロングトレイルを楽しめます。
笹尾根の素晴らしいところはそのほとんど9.5割ほどが「トレイル」であることです。
トレイル率は上記で挙げた雲取山のロングトレイルより多く、舗装路は和田峠で一瞬だけ出てくるぐらいです。
縦走中に舗装路が出てくると少し気分が萎えてしまいますが、笹尾根の縦走路はほとんどがトレイルなので最後まで贅沢な山旅が楽しめます。
まさに「ロングトレイル」の名にふさわしいコースだと思います。
注意点としては1000m前後の低山を縦走していくので夏場は暑くて不向きなこと。
また、高尾からスタートだとずっと登り基調なので、奥多摩側からスタートした方が楽で快適だということでしょうか。
ベストシーズンは秋から冬にかけてでしょうか。
ただ、日没も早いのでこちらも相当ハイペースで進まないと日没までに下山できませんが・・・(三頭山の避難小屋に宿泊して一泊二日で踏破するというのも手です)
ですが奥高尾の縦走路は道幅も広く、しっかりとしておりナイトハイク向きではあります。
ですのでなんども歩いた経験者限定ではありますがナイトハイク前提でコースタイムを組むのもありかと思います。
コースなどはこちらのブログが参考になります。
大菩薩連嶺
大菩薩連嶺とは山梨県東部にあり、広く解釈した場合の奥秩父山塊の南端となる連嶺(wikiより引用)
大菩薩連嶺の魅力はなんといっても草原がメインの牧歌的なトレイルでしょう。
まるで夢の中に出てくるかのような幻想的な風景を楽しむことができます。
また、基本的には森から草原、森から草原といったコースレイアウトになっており、最後まで飽きさせません。
このようなお花畑も途中にはあります。
アップダウンはあるものの、それほど激しいものではないのでペースさえ上げすぎなければ快適に楽しめるでしょう。
大菩薩峠付近は人が多いものの、石丸峠から先はほとんど歩く人もなく静かなトレイルを楽しむことができますよ。
実際に筆者が歩いたコースはこちらです。
こちらも無理して日帰りしようとせず、大菩薩嶺の山小屋に一泊してから縦走するのがお勧めです。
また、筆者は塩山駅から直接歩いて登っておりますが、登山口まではつまらない舗装路なのでバスでショートカットすることをお勧めします。
そうすればトレイル部分は25キロほどなのでロングトレイル入門にもいいかもしれません。
大菩薩嶺は周回だけで終わる方が多いようですが、個人的には大菩薩峠から先の稜線もとても素晴らしい景色を見ることができますので、体力がついたらチャレンジしてみることをお勧めします。
三浦半島横断トレイル
三浦半島を横断するロングトレイルコースです。
トレイルランのレースにもなっているコースであり、非常にトレラン向きなコースでもあります。
また、海の近くの里山を縦走していくので各ピークからは海が綺麗に見えるのも特徴の一つです。
標高がとても低い里山がメインなのでベストシーズンは虫や蜘蛛の巣が無くなり、空気が澄んで景色がよく見える「冬」ですね。
距離は40キロほどですが、アップダウンは緩やかで舗装路も比較的多いので強度的にはそれほど高くはありません。
街に近く、エスケープも比較的すぐにできるのでこちらもロングトレイルビギナー向きかもしれません。
ですが途中には冬場でも薮が生い茂っているこのようなところがあったり
標識なども少なく、道迷いポイントがたくさんあります。
実際、筆者もなんども道を間違えて右往左往しました。
トレイルはこのような感じのシングルトラック(人一人が通れるぐらいの細いトレイル)が多く、場所によっては街から近い里山とは思えないほどの山深さを感じるところも。
上記で紹介したコースのような絶景や綺麗な稜線などはなく、やや地味ですが里山特有の面白さがあります。
私が実際に縦走したコースはこちら
私は温泉をゴールにしたかったので鎌倉に入った後は稲村ガ崎へと向かいましたが、そのまま北へと直進すればビートルズトレイルという良質なコースが続き、港南台まで出られます。
温泉にこだわりがなければ港南台まで縦走するのも面白いでしょう。
まとめ
今回紹介したのは私の活動エリアの関東のロングトレイルのコースでしたが、関東だけに絞ってもまだまだ魅力的なロングトレイルのコースはたくさん存在しています。
トレイルとトレイルをつないで自分だけのコースを作り上げるのも面白いものです。
ロングトレイルは時間も体力も必要で大変な面は確かにあります。
しかしそれだけに得られる感動や達成感は半端なく、私はどハマりしてしまいました。
お勧めなのは歩くことだけにとらわれず「トレイルランニング」を山行に取り入れることです。
トレイルランニングはよく誤解されがちですが、ランニングの一種ではなく登山スタイルの一つです。
1日でより遠くへと行けるのがトレイルランニングの醍醐味だと思っております。
走れそうな平坦なトレイルや、緩やかな下りだけでも少しずつ走ってみるようにしましょう。
もちろん、はじめはそれほど遠くへは行けないかもしれませんが、体力がついてくれば一気に1日の行動距離が伸びていきますよ。
みくぞう
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